2011年10月18日火曜日

「売れない時代に売る」ための営業改革

第4回:あるべき営業活動=案件創出型営業力の強化に向けて
エム・アイ・コンサルティング株式会社
真保 浩


 
これまでのコラムでは、「自社の市場・顧客の求める根源的ニーズを見定め、このニーズに訴求する自社の商品・サービスの提供価値(=ウリ)を明確にすること」、および「ターゲットとする市場・顧客セグメントの特性、営業プロセスの特性を考慮して営業チャネルの最適化を図ること」を述べてきた。これはすなわち営業改革の大前提となる「営業戦略」を策定することに他ならない。これを図示すると以下のように整理できる。
今後のコラムにおいては、この営業戦略を前提とした、営業活動そのものに着目した営業改革のポイントについて述べていきたい。









  昨今の技術の進展や情報化の波によってもたらされる、商品・サービスの機能自体による差別化の困難さ、ひいては不毛な低価格競争の罠に陥ることを回避するために、前回は、営業改革の


<顧客の購買プロセスを考える>

営業改革を通じて実現すべき「あるべき営業活動」とはどのような姿であろうか。

顧客の立場に立った購買プロセスを考えてみると、大まかには次のような段階を経るのではないだろうか。

1.漠然とした問題意識:「売上がだんだん低下してきている」
2.明快な課題認識:「若手~中堅営業マンの生産性向上が不可欠」
3.ソリューション定義:「営業事務のIT化(自動化・省力化)による間接業務負荷軽減」
4.調達仕様定義:「『営業事務IT化』に関する詳細仕様の定義と入札依頼(RFP)」
5.選定・契約:「ベンダーからの提案評価、選定、契約」

非常に簡単な例ではあるが、イメージは持っていただけるであろう。さて、ここで着目していただきたい点がいくつかある。









<営業活動を展開する上での攻めどころ>

まずは4⇒5(「調達仕様定義」→「選定・契約」)である。この段階では、既に調達仕様が確定してしまっている。例え、自社製品の最も大きな強みが「顧客情報の統合管理」や「営業マンの活動支援・管理」であったとしても、「営業事務のIT化」が仕様である以上、これ以外の強みは強みではないし、場合によっては余計なコストアップ要因でしかなくなる。「顧客管理のやり方や活動管理の工夫でも生産性向上は実現可能」と息巻いたところで、後の祭りである。
このように、相手の土俵での勝負という制約を受けざるを得なくなることが、「入札依頼(RFP)が出てから動くのでは勝率は低い」と言われるひとつの要因である。

これを踏まえると、2⇒3(「明快な課題認識」→「ソリューション定義」)の段階で食い込むことがひとつのポイントである。これであれば、上記のように自社の強みを生かして、「営業マンの生産性向上を志向した顧客管理・活動管理の強化」といったように、そのソリューションに合理性・妥当性があるのであれば、案件のテーマを変えて、自社に有利な条件をベースに提案していくアプローチも可能となる。

更に言えば、12(「漠然とした問題意識」→「明快な課題認識」)への展開でも攻略すべき余地はある。「売上低下」に関して、「若手~中堅営業マンの生産性低下」がその本質的な要因なのか、また、仮に「生産性低下」が要因だとしても、その対応策が「IT化」であるべきなのか。
もし自社が教育研修会社なら「営業マンのスキルの問題⇒教育研修の充実」と言うだろうし、広告代理店であれば「ブランド力の低下⇒広告戦略再構築とこれに沿った新広告制作」、納入業者であれば「商品ラインナップの魅力度低下⇒納入商品の拡充」等々、より上流からの営業であればあるほど、様々な切り口での営業機会=案件が広がるのである。

<「案件創出型営業」と「案件マネジメント型営業」>

これらを踏まえると、1~3(「漠然とした問題意識」→「ソリューション定義」)までの顧客の漠然とした曖昧なニーズや問題意識から課題を明確化し、ソリューション(=案件)を定義するまでのプロセスに対する営業活動を「案件創出型営業」、4~5(「調達使用定義」→「選定・契約」)までの案件が明確化されニーズや仕様が明確な段階において、競合他社に比して優位性を確保し、いかにこの案件を獲得するかという営業活動を「案件マネジメント型営業」とに分類することができる。

そして、多くの企業は、「案件創出型営業」の能力を付けたいという意向を強く持っているようである。(もちろん「案件マネジメント型営業」においても課題・論点は多いし、この部分で改善すべき事項を抱えている企業が多いのが実態ではあるが)


<あるべき営業活動 ~ 案件創出型営業力の強化に向けて>

では、「案件創出型営業」とは何か、もう一歩踏み込んでみると、
·     戦略的に顧客企業との強固で親密なリレーションを創り、
·     顧客の戦略課題(根源的ニーズ)に合致した付加価値ソリューションを顧客と共に創り、
·     それを顧客内で正式案件化し、競争を排除したまま(または競争上の優位性あるポジションを維持したまま)に案件を獲得するという顧客との共創関係に基づき案件を構築・獲得するプロセス
であると考える。

「案件創出型営業」における初期段階で、顧客側もまだ漠然とした問題意識しか持っていない段階である。この段階から、キーマンとざっくばらんに広く顧客企業の経営課題を語り合い、その上で、自社の商品・サービスの提供価値をもってその経営課題を解決するためのソリューションを構築するアプローチ・能力が必要なのである。つまり、「深い顧客理解能力」が必要である。

そして、顧客の理解(顧客の根源的ニーズの把握)の次には、その解決策として自社商品・サービスの価値訴求・提案へと展開させることが必要である。その前提としては、営業戦略の最初のステップである「市場・顧客の求める根源的ニーズを見極め、このニーズに訴求する自社の商品・サービスの提供価値を明確にすること」が生きてくる。このように自社としての戦略の軸を明確化し、営業担当者に理解・徹底させることが、すなわち顧客理解から自社の営業案件創出への道筋・シナリオを理解・徹底させることにつながるからである。

このように自社の営業戦略を背景として、個々の営業担当者レベルでの深い顧客理解と戦略的な顧客との関係構築、これらを成しえて初めて案件創出型営業は実現できるのである。



 

2011年10月4日火曜日

「売れない時代に売る」ための営業改革

第3回:営業チャネルの最適化による生産性とコスト効率向上


エム・アイ・コンサルティング株式会社
真保 浩


昨今の技術の進展や情報化の波によってもたらされる、商品・サービスの機能自体による差別化の困難さ、ひいては不毛な低価格競争の罠に陥ることを回避するために、前回は、営業改革の第一歩として、自社のビジネスが顧客に対して提供する本質的な価値を定義し、その上で顧客の根源的なニーズに訴求する自社商品・サービスの「ウリ」を明確にしていくことの必要性を述べた。

営業改革の次のステップは、営業チャネルの最適化であると考える。営業チャネルの最適化は、「顧客セグメントと営業チャネルの最適化」と「営業プロセスと営業チャネルの最適化」の2つの視点が基本である。

まず「顧客セグメントと営業チャネルの最適化」について、みなさんの会社は次のような状況にないだろうか?

(1) そもそも明確な顧客セグメントという考え方がない
(2) 営業チャネルは全てが人的リソース(=高コスト化)
(3) 営業リソースの限界で、本来攻めるべき市場や顧客をカバーし切れていない
(4) 営業担当者はリレーションのある訪問しやすい顧客ばかりケアしている  など

こうした状況の中で、顧客セグメントと営業チャネルの最適化とは、概念的には以下のようなイメージになる。


<顧客セグメントと営業チャネルの最適化>










 自社にとっての重要度で顧客をセグメント化した上で(この例では、取引実績・期間などのリレーションと、将来を含めた潜在的な売上規模で、重要度を区分)、重要度の高い顧客には営業担当者によって手厚いフォローをし(B2C[注]で言えば、ロイヤルデスク/コンシェルジュ、顧客担当制営業等々が相当)、逆に相対的に重要度の低い顧客は、Web、電話、DMなどの低コストチャネルでカバーをすることで、営業担当者リソースの有効活用と、低コストチャネルによる幅広い顧客のカバレッジを実現することが、その戦略的意図である。

また、営業担当者の割り当てにおいては、経験・スキルレベルによって、担当顧客の割り当てを考慮する必要がある。既出のイメージ図で行くと、例えば、右下の象限(潜在売上規模は大きいが、未だリレーション開拓中)が最も攻めるべきターゲットであり、第一線級の営業担当者を割り当てるとか、右上の象限の現時点で既にリレーションもあり取引規模も大きい顧客は、ベテランとこれから伸びる中堅若手を割り当て、ベテランのフォローの下で大口顧客との取引経験を積ませるといった戦略的な割り当ても、営業担当者の最適配置という観点では必要な対応となる。

もうひとつの視点は「営業プロセスと営業チャネルの最適化」である。これは、営業プロセスの各段階ごとに、その特性に応じた営業チャネルを割り当てるというものである。


<営業プロセスと営業チャネルの最適化>











一般的に、全てのターゲット顧客への全ての営業プロセスを営業担当者(人的リソース)でカバーすることはコスト的にも得策ではないし、そもそもそこまで潤沢な営業担当者を保持している企業は皆無に等しいであろう。「いや、我社は全ての顧客対応は営業担当者が実施している」という企業は、本来100あるターゲット顧客のうち、目の前に見えている70とか80の顧客に対応しているだけであり、残りの潜在的ターゲットたる20-30の顧客には手をつけられていないことが多い。(B2Cであれば、店舗に来てくれる顧客だけでなく、店の外を歩いている人を来店させることが営業対象)
いずれにしても、これが新規顧客開拓に悩む企業が多いひとつの要因である。

これに対しては、前述の「顧客セグメントと営業チャネルの最適化」に通じるが、営業担当者が対応すべき顧客およびプロセスを明確化し、相対的重要度が低い顧客であったり、営業担当者が担当する必要性が乏しいプロセスを、可能な限り、Webやコールセンターで代替することが解決策となろう。

さらには、特に初期の情報収集段階におけるWebの活用度合いは非常に高まってきており、顧客利便性という観点も考慮すべき事項である。
初期段階の情報収集や競合との比較検討などによる一定の研究や絞込みは自らで実施したいという顧客や、いきなり営業担当者が出てくると面倒なので簡単にWebや電話で済ませたいといった顧客層は存在する。また、興味を持ったら24時間365日いつでも即座に情報収集したいというせっかちな顧客もいるであろう。こうした顧客からすると、営業担当者以外の顧客対応チャネルがあることは非常にありがたいし、逆に企業からしても、顧客の購買意欲が高まっているときこそ、最も確度の高い売り時であり、これを逃さないことは大事なことである。

さらには、これらの営業チャネル(顧客接点チャネル)を多様化させる際には、その対応品質と、チャネル間の情報連携が非常に大切である。
せっかくWebや電話で問い合わせてきた新規顧客情報が営業担当者に引き継がれない・放置されているというもったいない話は結構よくある。また、同じ内容を何度も説明することなく、Webで問い合わせした内容は確実にコールセンターに引き継がれ、即座に必要な情報をきちんと提供してくれるなどの一貫性のある対応は、顔を合わせないチャネルなだけに余計に大切であるし、それが初期段階における顧客への企業イメージとして確立・固定化されるからである。

今回は紙面の都合があるので基本的な考え方の記載に留めたが、営業チャネルの最適化には検討すべき論点が多い。何故なら、営業コストの多くは人件費を含む営業チャネルに係るコストであると同時に、チャネルは実際の営業活動を行う主体であり、すなわち企業の売上を担うものであるからこそ、その営業ROI(=投資対効果)が重要な経営課題になるからである。

2011年9月20日火曜日

「売れない時代に売る」ための営業改革

2回:営業改革の第一歩は商品・サービス戦略から


今回の震災や原発問題の影響は、製品・部品調達問題、電力問題、物流問題、消費の停滞・意欲の冷え込み、復興に伴う財政問題等々、日本全国においてじわじわとその影響が目に見える形となって表れてきているようである。
前回のコラムでは、「売れない時代に売るための営業改革」に取り組むことを提案したが、このような環境下で手をこまねいていることなく、より一層の前向きかつ攻めのスタンスによる経営が求められてきているのではないだろうか。

では、一口に「営業改革」と言っても、何から手をつければ良いのであろうか。
その出発点となるのが、「マーケティング戦略」である。その中で、特に重要なのは、「商品・サービス戦略」であると考える。

さて、このコラムを読んでいるみなさんに質問がある。

「みなさんは、何をウリにして自社商品・サービスの営業を行っていますか?」

いろいろな答が想定されるが、大きく分ければ機能・性能、品質、価格に分類できるのではないかと思う。

しかし、ここで考えていただきたいことがある。これらは本当に競合他社に対して優位性のある「ウリ」になっているのだろうか?またそれは長期に渡って持続可能なものなのだろうか?

昨今は技術の進展が著しく早く、圧倒的な商品優位性を確立することは困難な時代である。身近な例では、最近はやりのスマートフォンを考えてみればよい。某社の出したスマートフォンは非常にユニークな商品であり一世を風靡したが、ほんのわずかな期間しか経過していない間に各社が類似商品を発売し、今ではどの企業のどの商品が優れているのか、何が違うのか、我々消費者からすると全く理解できない状況になっている。
そして、このように商品・-サービスの機能的な価値の独自性がなくなるとどうなるか。訪れるのは厳しい価格競争による消耗戦であり、まさに昨今多くの企業が頭を悩ませている状況に陥ることとなる。

みなさんの会社の置かれている状況はいかがであろうか。


もし幸いにも商品・サービスの圧倒的な優位性があるのであれば、営業改革の軸は、その優位性を明確に分かりやすく顧客に訴求するためのブランディングとメッセージングの強化、および、より多くの顧客にリーチするための営業チャネルの量的拡大になる。より多くの顧客に接触できれば、商品・サービスの優位性により勝手に売れるという構図になるのである。そして、他社が追随してくる前に、スピード感を持って圧倒的なシェアを獲得することが戦略の基軸となる。

しかし、そのような恵まれた企業はそれほど多くないと思われる。では商品・サービスの差別化に悩む企業はどうすれば良いのだろうか。

それは、真の顧客ニーズ(=根源的な顧客ニーズ)に訴求することである。

顧客はその商品・サービス自体が欲しいわけではない。本当に欲しいのは、商品・サービスを活用することによって得られる価値を求めているのである。
例えばITソリューションベンダーのビジネスを例にしてみると、顧客企業はハードウェアやソフトウェア自体ではなく、IT活用によって生産性を高めたいとか、事務負荷を下げたいといった顧客の課題を解決したいのである。これが、営業スタイルとして、いわゆるソリューション(解決策)提案が求められている所以である。

さらに、顧客の課題を解決するということ自体も深く掘り下げて考えてみれば、最終的な売上拡大やコスト削減などの経営戦略の実現に資するビジネスメリットを享受したいということが、本当のニーズであることが見えてくる。
そなると、例えばコスト削減を主要経営課題としている企業であれば、「IT化による事務コスト削減」だけではなく、「IT化による事務コスト削減に加えたSaaS型のシステム導入によるシステム構築・保守・運用コスト削減の両立」が訴求ポイントとなってくるかもしれない。
さらには、ITだけではなく直接的に事務部門全体のアウトソーシング(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が、大幅なコスト削減施策として経営層には受け入れられる可能性もある。
こうなってくると、自社の商品・サービス自体の機能的な優位性だけではなく、真の顧客ニーズを把握する能力、その顧客ニーズの観点からの自社商品・サービスの優位性の訴求が競争の軸となるのである。

このように、商品・サービスの持つ機能そのものだけではなく、顧客ニーズに対する商品・サービス活用を通じた効果の訴求(ソリューション提供)、自社の他商品・サービスとのパッケージングによる一括サービス(システム構築+保守・運用)、根源的ニーズに応じた提供商品・サービスのシフト(BPOへの展開)などを経ることで、「ウリ」の軸が商品・サービス自体の機能的な価値から、異なる土俵へと展開されることになる。

商品・サービス戦略は、卸売会社であれば「小売店での売上向上のための販売コンサルティング会社」、製造機器メーカーであれば「顧客のサプライチェーンの最適化会社」、建設会社であれば「快適なオフィス・住空間の提供会社」、レストランやホテルであれば「癒し・快適さ・エンターテイメントの提供会社」、部品メーカーであれば「いかなる個別ニーズに誰よりも迅速に応える組み立て企業のパートナー」、または業界に関わらず「業界のイノベーターとして徹底的な低価格サービスの提供」等々、自社の存在意義を再定義することで、どのような顧客ニーズに対して、どのような価値を提供するのか、見えてくるはずである。

営業の勝負では、持っている武器(=商品・サービス)の優劣により勝負が決まる面が大きい。一方で、いくら優れた武器を持っていても、それを生かした戦い方が出来なければ、やはり勝負に勝つことは難しい。
それ故に、営業改革の第一歩は、自社商品・サービス戦略を策定し、いかなる軸をもって顧客ニーズに対する価値を訴求し、他社優位性を確保するかを明確にすることであり、これを受けて、この商品・サービスを生かした営業を実行するための営業プロセス・組織や営業担当者の能力育成などの改革の打ち手へと展開されていくのである。



エム・アイ・コンサルティング株式会社
真保 浩

2011年9月15日木曜日

「売れない時代に売る」ための営業改革

1回:売れない時代だからこその営業改革のすすめ

エム・アイ・コンサルティング株式会社
真保 浩

まず初めに、今回の東北関東大震災で被害にあわれた皆様に、心からお見舞いを申し上げます。

さて、昨今、不透明な景気動向、設備投資の減少、デフレ、消費マインドの低迷等々、企業を取り巻く経営環境は非常に厳しい状況にある。また、ライバルとの競争激化も進み、商品差別化は困難で、つまるところ低価格化しか競争軸が見出せず、結局は消耗戦の様相を呈している。こうした環境下において、多くの企業の方々から、「全然モノが売れない」、「売れる気がしない」といった悲観的な言葉をよく耳にする。

まさに、「売れない時代」である。しかし、売れない時代でも売るのが、営業の使命である。それにもかかわらず、多くの企業の営業部門の方々からは、自社の営業について以下のような課題・問題意識をよく耳にする。(ちなみに、これらは読者の方々の会社にも当てはまる部分は多いのではないだろうか)

·       数字のプレッシャーばかり強くなっているが、いかにその数字を達成するかの戦略・施策は降りて来ない(または、いろいろな戦略・施策は導入したものの、現場感とかけ離れて定着せず、効果も上がらないままに形骸化)
·       提案型営業との掛け声は良いが、実態は相変わらずの御用聞き型の営業スタイルのまま変わっていない
·       顧客からの要求が厳しくなっており、結果的に値下げ競争という採算無視の消耗戦しか勝負の軸が見出せていない
·       受注率が下がっているので、案件の如何に関わらず数多くの引き合いに取り組むことが求められ、結果的に採算も改善しないし、営業部隊の疲弊も激しい
·       内向きの会議や報告・管理作業ばかりが肥大化し、本業に割ける時間が乏しい(または、内部作業に忙しくしているだけで仕事をやった気になっている人が増えている)
·       若手が育っておらず、これまでのOJTに頼った人材育成には限界を感じている
  など

そして、これらのコメントを下さる方々の多くは、こうした課題・問題は重々承知しているものの、結局は有効な打ち手が見つからず、既存の延長線上での「がんばり」で何とか凌いでいる状況に頭を悩ましている。

一方で、このような同じ悩みを抱えている中から、抜本的な的な営業改革を図ることで、大きな成果を出している企業もある。

例えばA社では、「営業プロセスの標準化」、「チーム制導入」、「ROI管理強化」を行った。
営業活動をその進捗状況に応じた各段階を軸に標準プロセス化し、それぞれの段階で満たすべき要件(顧客顕在・潜在ニーズは明確か、キーマンは抑えたか、競合相手は把握できたか等)を定義することで、各段階における営業活動として営業担当者が実施すべきことを明確にするとともに、各段階完了時に、次の段階に移行するためのマネジメントのレビュー・承認を設けることで、営業活動品質を高めるとともに、採算性、勝ち目などを判断し、場合によっては営業を中断させる、すなわち勝ち目のない勝負に時間・労力とお金を使わないようにした。
また、顧客の要求水準が高度化・複雑化しており、一人の営業担当者では全てを賄うことが難しいケースが増えていることから、案件特性に応じた経験豊富なメンバーを営業チームメンバーとして参画させ、部門を越えた総力戦で勝負するようにした。(ちなみに、サポートメンバーにも営業成績が付与される仕組みも導入している)
さらには、営業活動にかかる費用を可能な限り直接原価として把握することで、成約価格との総合的な収支を管理できるようにした。これにより、採算割れになる営業活動や提案を回避できるし、逆に、営業担当者達には、採算性の見合う、より大きな案件に対する営業活動に注力するようなマインドセットが醸成された。

SFACRMなどのITを導入している企業も多いが、なかなかその活用が進まず、ねらった効果が得られていないという話を良く聞くが、B社ではSFAの導入にあたって、「営業管理のためのSFA」ではなく、「営業に役立つSFA」を目指した。
例えば、案件で提案する見込製品の登録を行うと、その製品の提案に必要となる関連部門にも自動的に案件情報が共有化され、チームとして営業を推進するようにしている。また顧客課題を起点として登録を行った場合には、課題に応じた製品の組み合わせが提示され、どのようなアプローチをするべきかといったアドバイス情報も得られる仕組みを構築している。これにより、単品営業ではなく、商品を組み合わせたトータルパッケージでの営業提案を後押ししている。
このようなSFAの活用メリットを提供することで現場の営業力を引き上げるとともに、営業管理強化という元々の目的・効果も合わせて享受している。
また、別の事例では、IT活用を定着化させ、効果をあげるために、ユーザー(営業)部門からメンバーを組織化し、その組織が主体となって、勉強会を開催したり、便利な活用方法、成功事例などを集約・広報するなど、「ITありき」ではなく、現場のユーザー視点に立った定着化活動を図っている例もある。

C社では、営業担当者が一定のテリトリーを与えられて営業活動を行っているが、担当顧客が多く、営業担当者の負荷が非常に高い状況になっているとともに、本来的に攻めるべき顧客に対する営業活動時間が十分に割けない状況に陥っていた。
このケースでは、顧客分析に基づきセグメント化した上で優先度・重要度を設定し、重点的に攻めるべき顧客を明確に設定して営業活動を集中化させるとともに、相対的に優先度・重要度の低い顧客に対してはWebによる対応にシフトさせることで、営業担当者のサポートが薄くなることを補完している。さらには、Webを積極的に活用した新規顧客開拓(Webマーケティング)を強化することで、営業担当者の活動を支援することも志向している。

これら事例におけるA社は「営業プロセス・営業マネジメント改革」、B社は「ITをテコとした営業力強化」、C社は「顧客戦略策定とマルチチャネル化」と整理できる。他の事例を掲げれば異なる改革テーマが見えてくるであろう。このように営業改革として取り組むべきテーマは、各社の置かれた環境や営業部門の現状により多岐に渡る。

「営業力強化」は古くて新しい課題である。永遠の課題という言い方でも良いかもしれない。前述の通り現状はモノが売れない環境にある。しかし、こうした中でも業績を伸ばす元気の良い企業も沢山ある。だからこそ、こうした環境下での勝ち組を目指して、この深遠なる課題に向かって、改めて「売れない時代に売るための営業改革」に取り組むことを考えてはいかがだろうか。

2011年7月1日金曜日

日本を襲う金融の大津波にどう対応する? プランBに備えよ

日本を将来襲う可能性が有る金融の大津波、その状況は日本の価値暴落とそれに伴う経済・金融の大混乱である。具体的には、円安、国債の暴落(金利は上昇)、制御不能なインフレ、金融恐慌、経済の混乱に伴う大幅な経済の落ち込み、といった現象であろう。地震と津波は局所的な現象であったが、この大津波は確実に日本全土を襲い、そしてその影響は世界に波及する。


危機のトリガーから危機的状況へ

 では、そのような危機をもたらすトリガーとなる現象は何であろうか? 筆者は、図-1に示すような以下の二つの事象を、危機のトリガーとして想定する。
・国債暴落(=長期金利の急上昇)
・円の暴落(=為替の急激かつ大幅な円安)


 

1990年よりここまで赤字国債の発行を続け経済を維持してきた現在を例えれば、からからに乾いた藁の上に薪が積み重なった状況である。ここに上げた多くの危機のトリガーのうち一つでも本当になれば、火が付き燃え上がることは、想像に難くない。
 そのようなトリガーにより起こった危機は、どのように拡大していくであろうか。筆者は、まずは年率20%程度の円安・インフレといった状況に陥る可能性が大きいと思う。
 円安・インフレの進行と同時に国債は暴落する。そうなると、国民は金融機関の経営への不安を感じ、郵貯・銀行預金の引き出しや保険解約へ殺到する。更には、自らの預金の実質的価値が目減りすることを避けるために実物資産を購入する動きが強まり、インフレはさらに昂進する。
 金融機関のバランスシートが国債やその他債権の暴落で傷んだところに、預金者の引き出しが殺到することになり、多くの金融機関は倒産の危機に瀕し、その結果産業界に資金が回らなくなり、経済混乱から経済はマイナス成長、物価は上昇というスタグフレーションの状況に陥る。


危機的状況の逆進性

 このような金融・経済危機において最大の被害者は国民、それも弱者である。この20年における金融危機や不況は、国民にきわめて深刻な影響をもたらしたかと言えば、それはNOである。
 無論、低成長や低金利は多くの国民をじわじわと苦しめているのだが、個々の生活レベルを見れば所得が低下したもののデフレの恩恵もあり、必ずしも危機的な状況には至らなかった。しかし今回の危機で、その痛みをもろに受けるのは弱者、次にはある程度の資産を持つ一般的な国民である。インフレの進行に応じて年金や保障費が上がらなければ、その分実質的な生活が苦しくなる。企業倒産から失業も増加するであろう。倒産を免れた企業でも、平均すれば経済成長率の低下で、インフレに見合った昇給を実施することは難しくなる。

金融危機の津波は、弱者により大きな被害をもたらす、逆進的な災害である。年金や社会保障費で暮らす者に最も厳しく、次には倒産企業の従業員へ厳しい、そして倒産を免れた企業においても従業員の生活は、一様に厳しくなるのである。
 このような20%のインフレが仮に5年続いたとすれば、計算上物価は2.5倍、為替は250%の円安となる。そこまで行けば、国家債務も実質上半分以下になり日本の価値も相対的に調整され、経済は落ち着きを取り戻すであろう。
 消費税よりもっと強烈な、国民等しく課税するインフレーション・タックスの効果である。日本の実質経済規模も半分以下とは言わないが、80%程度まで減少しているのではないか(かなり当てずっぽうです)。1997年に金融危機に襲われた韓国に比べるとかなり深くて長い危機ではありましたが、さあ、ここから再出発という感じであろう。
 しかし、インフレの初期段階でそれに合わせ年金や生活保護、その他社会保障費を上げたり、金融恐慌や経済対策のため国債の発行を拡大したり、外貨交換の規制などを行うと事態は破壊的な状況に陥る。津波の被害は幾何級数的に拡大し、最終的にはハイパーインフレーションに陥り日本壊滅、世界経済は大混乱といった状況が予測される。
 それこそ原発が、圧力容器や格納容器を含め、一気に爆発したような想像を絶する状況になると思われる。
 こうなると、その後の危機の状況がどのような結末をもたらすかは、予想できなくなる。いずれにしても経済の混乱はより深く長くなり、政治的にも社会的にも、破壊的な混乱がもたらされる可能性が高い。

プランB 準備政策

 さて、いよいよこのような事態に備えるプランBを解説していこう。プランBは大きく災害に至るまでに準備する準備施策と、災害が発生した際に行う実施施策に分かれるが、先ずは準備施策を述べて行く。
 準備施策の中でまず重要なのは、日本の金融・経済システムおよび国家財政の体質向上施策であり、具体的には以下の項目が考えられる。

・増税と社会保障抑制の一体的改革により、財政バランスを良化させる。

・経済成長実現により経常黒字幅拡大をもたらす経済政策
 -新成長戦略の実施
 -政治主導による国内産業構造改革により過当競争抑制と国際競争力向上
 -徹底した規制・制度改革
 -国際的競争環境のイコール・フッティング
 -雇用流動性の向上
 -中小企業は弱者保護から強者育成へ
 これらはいずれも、現状政策課題に上がっているものの、実行局面において主として既存利害関係者の調整がかなわず、実効が上がっていないものが多い。
 それから、プランBの発動が想定されるような金融・経済状況において、現状の準備が十分でない項目は、以下のようなものがある。

・自治体破産法制の整備
 -現状自治体再建の法制はあるが、債権カットや破産管財の法制は無い。

・諸外国との相互依存関係を強化(特に対中国)
 -中国を始め諸外国の上質な人的・金銭的資源を、日本に取り込む(老人施設入居、企業での採用促進)
 -中国特定地域との相互関係を重点強化(華北部?)
 -日本の中国向けプライベートバンキングビジネスを強化
 -ASEAN(非華僑国)、インド、EUとの関係強化(近攻遠親)

・外貨獲得手段の維持・拡大
 -円安で競争力を増す製造設備の維持・拡大
 -対外国人向け観光施設・拠点整備
・外交的安定の獲得と財政・金融外交政策準備

・プランB実施諸政策の準備

・金と外貨の蓄積
 -現在の外貨準備1兆ドルは充分か検証要


これらの施策は、その多くが現状の金融・経済政策との協調が充分に可能なものであり、プライオリティを上げることで取り込み可能であろう。
 次は、プランBの内容である。内容については、図-2にまとめたようにその項目は多くの省庁にまたがり多岐にわたる。実施にあたっては、現在の復興庁設置でもたもたしているような状況は問題外。政府の関係各省庁のみならず、日銀や金融界を中心にした経済界とも緊密に連携した組織を構築し、運営にあたる必要がある。

 
そのような運営の中核となりうるインナー組織を、非公式かつ早期に立ち上げ、内容に関する議論と共に実際に起こりうる状況を想定した「演習」に取り組んでいくことが望まれる。
 また、重要なのはこのタイミングで長年出来なかった日本の産業構造と社会システムの改革を一気に行うことである。表の中では、低生産性産業の再編と抜本的な規制制度改革、そして優先順位に基づく緊縮予算の実施による全面的な行政サービスの見直しと再構築が、それにあたる。ここで重要なのは、そのような準備を事前にきちんと行っておくことである。そうでないと、各所から上がる要求の火の手に対して適格な対応が出来ず、結果的により混乱を大きく長引かせ、国民の不利益を大きくしてしまうからである。


最後に

 東日本大震災の復興にもたつき、原子力問題から全国レベルの電力危機が派生し、多くの製造業が国外移転を考える現状はプランBにとっては危機的な状況と言える。また、不穏な動きを強める中国は、軍部と現在の指導部が徐々に不穏な雰囲気を醸し出しつつあるさまは、1920年代から軍部が台頭した日本の状況を思わせる。
 一方で、太平の夢からいまだ抜けきれない日本は、当時の中国の状況に被るものが有るのではないか。このような迫りつつある危機に、日本の政治や企業、国民は未だ性善説を信じているように思える。それはそれで幸せなことであるが、政治が今の体たらくから脱し、リアリズムに基づいた政策を行わないと我々の日本の将来は危うくなると思われる。この課題提起が少しでも、そのような行動を前進させることを祈りたい。