2009 年11 月
エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社
Steven Kelley
小島美佳
本書を読まれる方へ (サマリー)
米国先進事例やノウハウから学ぶ、というシリーズで続けてきた本レポートは、
これで最後となる。PartⅠで、商品や顧客の特性を踏まえたWeb マーケティ
ング戦略があるべきと申し上げた。そしてPartⅡで顧客に見つけてもらい、
選ばれるアプローチの重要性について記述させていただいた。
最後となるPartⅢでは、主に収集したリード(問い合わせ)をどのようにして
商談化するのか、という点に絞って議論させていただいた。
簡単に説明させていただくと、リードを商談化するために考慮すべき点は
2つだ。1 点目は、商談化に至るプロセスを詳細に設計し、それに基づいた
行動を行うこと。これを行う理由は、うまくいかない時に要因を具体的に
捉えることができるからだ。
そして、2点目はリードの質を担保するための見極めを早い段階で行うこと
である。我々の経験によると、1点目をクリアする前に、2点目でつまずいて
いるケースが多い。最後にコスト対効果に基づく改善活動をしっかり行って
いく。
本文ではSMART(Specific, Measurable, Achievable, Realistic, Time)という
概念を活用してこの重要性を強調させていただいた。さらに、一部の活動を
容易にするためのツールもご紹介している。
■Web マーケティング戦略は本当に検討されたか?
さて、本題に入る前に。Web マーケティングの戦略、という点をもう一度確認
いただきたい。何度もしつこいようだが、この出発点が大変重要である。
結局のところ、リードを商談に結びつけるために必須なのが戦略検討である
からだ。
Web マーケティング戦略とは、全ての土台となる。これがお粗末だと、その他
施策の効果も発揮されない。もし、本レポートを始めてダウンロードされた方が
いらっしゃったら、是非ともPartⅠ、PartⅡも読んでいただきたく思う。
■どうすればWeb マーケティングのROI が上がるのか?
それでは、改めてWeb マーケティングの目的、という点に立ち返ってみたい。
当たり前のことではないか、と思われる方も多いだろうがWeb マーケティング
を行う目的は、最終的な売上を伸ばすためである。しかも、通常の営業
プロセスとは異なる方法で、より効率的に、だ。従って、Web マーケティング
を始める前に、
①どの状態に達すれば売上が伸びたと言えるのか。そして、
②どの程度のコストで成果を達成できていれば効率的であったと言えるのか、
という2つのゴール設定を行うことが肝心である。
我々がこれまでに拝見させていただいたケースをみると、この2つをしっかりと
定義して実施している企業は少ない。或いは仮に計画はあったとしても、
数字を見ながら行うべき施策を修正したり、計画自体を腰を据えて見直す
PDCA を実践できているケースは稀だ。
なし崩し的に数字が忘れられ、経営への報告を行う前にバタバタするという
のが最も典型的なパターンだ。
Web マーケティングの成果は、できるだけ少ない投資で、できるだけ多くの
売上を上げられるのが理想的である。従って、これらの2つの点を具体的にし
(Specific)、測定できるKPI を設定して(Measurable)、到達可能なゴールに
(Achievable)、現実的な施策を用いて(Realistic)、具体的な期限を設定して
(Time)進めていくことが重要となる(SMART)。
当たり前のことを申し上げて恐縮だが、実際にこれを、胸を張って「できている」
と感じられている皆さんは、おそらく本レポートのダウンロードはされていない
だろうと思う。
■企業Xにおける商談化の実態
ここで一つのケースご紹介しよう。企業Xは、かなり早くからWeb マーケティング
の取り組みを始めていた。Web マーケティングの先進事例を多く研究し、最も
効率的に問い合わせ(リード)を収集する仕組みを構築していた。この企業で、
最も多くのリードを集めることができていたのは、研究レポートのダウンロード
であった。
ホームページ上に研究レポートを掲載し、それをダウンロードするためには、
顧客は自分の情報を入力する必要がある。これを行うことによって、沢山の
顧客情報が手に入っていた。
さて、これらのコンタクト情報に対して企業Xでは営業チームがアポイントを
取るためのコールを行っていた。手に入った顧客情報に対して電話をかけ、
興味を持っていただいた顧客と商談を進めていくアプローチだ。
しかし、商談化率はあまり良くなかった。全体のゴール設定なども行っていた
ので、数値は確認できたのだが、アポイント取得率は1%に満たなかった。
だんだん営業はモチベーションが下がっていく。
「いつもの通りテレアポをしているのと何が違うのか?」
「全てのコンタクトへ電話をかける必要があるのか?」
という不満の声が漏れてきていた。そして、次第に営業は、ほとんどコンタクト
情報へのフォローを行わなくなっていった。
■原因その①:顧客が「買う」タイミングを掴めていない
この企業X のような実態は多くの企業を見られるもので、決して日本企業に
限ったことでもない。米国のInTouch, Inc によると、Web マーケティングによって
得られたリードのうち、約80%は営業によってフォローされていないという事実
がある。
衝撃的な数字だが、事実だ。それでは、一体何が理由でこのようなことが
起こってしまうのだろう。冒頭のSMART に戻って考えてみよう。
ここで最も考えるべきは、現在行っている施策がどこまで現実的なのか
(Realistic)、ということである。
次項の図を見ていただきたい。
これも米国のデータ(Sirius Decisions)であるが、すぐにアポイントが
取れない、いわゆるアクティブでない顧客が、24 カ月以内に競合から同様の
商品を買っていた、という事実を示している。
仮に企業X が持っているコンタクト情報が、将来の顧客に成りうる可能性が
高いのだとしたら、購入するタイミングではない段階でアプローチしてしまって
いる可能性が高い。
「今、この段階で興味を示してくれなかった」=「悪いリード」ではないのだ。
商品特性にも依存するが、これは どのような条件が整えば顧客が購入する
のかを前もって見極めておく必要があることを示唆している。一般的に
研究レポートを1度ダウンロードする程度の顧客は、おそらくまだ興味段階で、
購入に至るケースは少ない。
それと比較して、より顧客側にとって労力のかかるセミナーへの参加や無料
診断への申し込みなどを実施する場合には、購買欲求が高いと考えられる。
顧客の行動を管理し、それらのタイミングに合わせて営業からのコールを行う
ことが重要だ。
このように、リードを商談に結び付けていく活動をナーチャリング(Nurturing)
と呼ぶ。PartⅡでも触れさせていただいたが、この条件がどのようにそろえば
良いのかを見極めるためには、既存のWeb マーケティングを活用しない状態
で、どのような営業の「勝ちパターン」があるのかを徹底的に議論し、洗い出し
ておく必要がある。
例えば、セミナーに参加してもらえれば勝率が高い、ある課題に対する問題
意識が高ければ勝率が高い、経営者と話せれば負けることが殆どなかった…
など、既存の営業が持つ知見をしっかり把握することだ。
■原因その②:リードの質が悪い
もう一つ、考えられる要因として、そもそものリードの質が悪いというのがある。
本来、Web マーケティング戦略の段階で、ターゲットとしたい顧客が定義されて
いるはずだが、その顧客プロファイルではないリードが集まってきている
可能性があるのだ。
我々の経験的には、前述した顧客の購入タイミングを誤ってアプローチして
しまっているケースよりも、リードの質の問題が深刻なケースのほうが多い。
事実、こちらを最初に解決しないと、どんなに頑張ってナーチャリングの施策を
打ったとしても意味はないし、営業チームの信頼を獲得することも難しい。
まず、必ず忘れずに行うべきは、初期の段階で できる限り質の良いリードと
そうではないリードの選別を行ってしまうことだ。これは、マーケティング側の
勘や肌感覚で行うのではなく、具体的な条件に基づいて篩にかける。
さらに、この条件は予め営業とよく話し合って決めておくことが重要だ。
当社では、この「質の良いリード」を見極める条件を
ULD(Universal Lead Definition)と呼んでいる。直訳すると、包括的なリードの
定義、という意味で、あらゆる角度から質の良いリードが定義されたものを指す。
これがなぜ重要かというと、すぐにアプローチすべき顧客を初期の段階で
絞り込むことにより、実際にナーチャリングの段階できめ細かいフォローを
行う顧客を取捨選択できるからだ。
労力をかけたくない顧客を早期の段階で見極めたい。そうでないと、冒頭で
申し上げたROI が実現できなくなってしまう。
■ROI を測るには、コスト対効果で見ないと意味がない
このように紹介した各種施策はROI を追求する上での「売上」向上を目指した
内容となる。しかし、この手の施策推進には、当然のことながら投資が必要だ。
はじめに設計したプロセスが万全、ということはまずあり得ないし、競合の動き
や環境の変化によって影響を受ける可能性も高い。
一度成功したやり方で、継続的に成功するとは限らない。PartⅡでも申し上げ
たが、そのために必要となるのが目標と現状との乖離を確認し、一つ一つの
段階でどの程度のコストがかかっているのかを確認することだ。
要するに、冒頭のSMARTの視点に立ち、行われている活動を随時チェックする
ことである。
例えば、
ランディングページへのヒット数は、1 件あたりどの程度のコストで実現
できているのか?
顧客情報の取得に、1 件あたりどの程度のコストがかかっているのか?
セミナーへの誘導にかかっているコストはいくらか?
アポイント1 件あたり、いくらかかっているのか?
上記の実態を常に押さえておくことが重要である。これによって、パフォーマンス
(成果が出ている、というだけでなくコストパフォーマンスを含めて)下がっている
ところへ必要となる施策を打つことが可能となるのだ。
商談化のプロセスに入り、だんだんと活動が複雑になればなるほど、新しい
施策を打つ前に、分析を行うことが重要となる。
例えば、商談化に至る過程であまり行われていない議論として、アポイントに
つながらない案件、或いは失注した案件の分析がある。
-なぜアポイントにつながらなかったのか?
-アポイントにつながらない顧客に共通する点は何だろうか?
-次のアポイントの際に何に気をつけることができるだろうか?
こういったことを自問自答するのだ。
しっかり議論することで、ちょっとした工夫で追加の投資を回避することが
できるかもしれない。Web マーケティングは、賢くやることによってコストを
かけずに成果に到達することができる。多くの企業があきらめずにこの新しい
領域で成功を掴んでいただくことを願ってやまない。
著者紹介
■Steve Kelley
米国ノートルダム大学卒業、ケロッグ経営大学修士課程終了(MBA)。
アクセンチュアにてシリコンバレーの戦略テクノロジーセンターに勤
務、東京のネットイヤーグループに勤務後、サンディエゴWebsense に
入社。セキュリティーソフトウェアのマーケティングや事業開発部門の
幅広い分野をリードし、売り上げを35 億ドルから343 億ドルに伸ばす
と共に、SaaS テクノロジーのエキスパートとなる。2009 年にボーダー
レス・グループCEO。
■小島美佳
慶應義塾大学を卒業。アクセンチュアに入社し、事業開発や営業分野
を中心とした戦略、プロセス、組織、人材の計画策定から改革支援まで、
数々のコンサルティング・プロジェクトを遂行。その後、エム・アイ・
コンサルティング・グループの立上げに参画し、自ら事業開発、営業を
展開する。現在は、海外における営業・マーケティングノウハウを日本
国内に展開する各種活動に従事。企業に対するコンサルティング支援を
する一方、営業トレーニングの講師としても活躍している。
以下は、少ない投資で成果が出るWeb マーケティングに関心のある方
のみお読みください。
レポートを最後までお読み頂きありがとうございます。
今回お読み頂いたレポートは、貴社のROI を急激に高める可能性を
秘めている強力な提案です。新しい方法論であり、ほとんどの企業が
実現できていないことが書かれています。
ここで提示させていただいた方法論は、早く始めるほど効果が出ます。
実行する時期をうかがう必要はありません。そのため、ライバル会社が
まだ着手していないと思われる「今」から実行することが何よりも重要です。
当社では、本レポートにてご紹介したWeb マーケティングを実践する
ための具体的な話を実践したいという方のために、手引書を無料で
プレゼントしております。入手した次の日から使える実践的な
ものとなっておりますので、ご興味のある方はご連絡頂ければと
思っております。
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