2010年4月8日木曜日

たくさんの読者コメントをもって副大臣に取材してきました 大塚耕平・内閣府副大臣に“改めて”聞く日本の成長戦略(その1)

肯定派も否定派もどんどん書き込んでください

NBO:前回、大塚副大臣にゲスト講師を務めていただいたこのコラムは多くの反応があり、同時に「コメント内容の濃さ」ととても驚きました。
大塚 耕平(おおつか・こうへい)氏
1959年名古屋市生まれ。83年早稲田大学政経学部卒業、日本銀行入行。在職中の2000年に早稲田大学大学院社会科学研究科博士課程を修了し博士号を取得(専門はマクロ経済学、財政金融論)。同年、日本銀行を退職。2001年参議院議員に初当選、現在2期目。鳩山由紀夫内閣にて内閣府副大臣を務める。著書に『公共政策としてのマクロ経済政策』(成文堂)、『ジャパン・ミッシング 消えた日本、再生のカギを考える』(オープンナレッジ)など
大塚:ありがとうございます。私も読者の皆様からのご意見を拝見しましたが、本当に参考になるものが多くありますね。
大上:それは本当によかった。今回は、これまでの3回の内容を振り返りつつ、読者のコメントをどう見るか話した上で、さらなる成長戦略の話を伺っていきたいと思っています。

 前回、「『ダメな理由』は聞きたくない」とした中で、提示された成長戦略の枠組みそのものについて、さまざまな反応をいただきました。たとえば、自動車もすべてEVやFCVにするという、ある意味、乱暴な仮説を提示したところ、「こういうものを待っていた」「ぜひ参加したい」と諸手を挙げて肯定する人がいた一方で、「今までうまく行ってないんだから、結局、上から目線な旧来の乱暴な政治家と一緒か」、「『ダメな理由』を丹念に拾って、そこから学びなさい」という、かなり強い否定のコメントもありました。

NBO:全体で言うと、肯定派:否定派=7対3ぐらいの印象でした。

大塚:私が読んだ印象だと、5対5ぐらいでしたけど(笑)。

大上:いえいえ(笑)、確かに7対3ぐらいだったと思います。面白かったのは、単純に肯定や否定を示すだけではなく、否定派を肯定派の人たちが「そんな考え方ではいけないんじゃないか」とさらなる議論が内部でも起こっていたことです。
 大塚さんはこうした読者のやり取りをどのように読まれましたか。

大塚:そもそも肯定派であれ、否定派であれ、これだけ反応をいただいたということは、日本経済の潜在的活力を感じました。皆さん、やはり日本のこれからを心配しているのだと思います。だからこそ、こういう双方向の、あるいは参加者同士の意見交換が行われることがすごく重要だという印象を強く受けました。
 いただいた意見はしっかり咀嚼するつもりですので、引き続き肯定派の方々にはポジティブなご提案をどんどんいただきたい。
 逆に否定派の方で、できない理由を、あるいは今までうまくいかなかった理由を1つ1つ、拾い上げていくべきだとおっしゃった方々には、「それをどんどん書き込んでください」とお願いしたいと思います。それをしっかり読ませていただいて、これからの糧にしていきたいと考えています。

余裕や付加価値を生み出す空間と時間は欲しいですね

大上二三雄氏

大上:成長を目指していく過程や成長するための壁を1つずつ乗り越えていくためにも、こうしたプラットフォームで国民の意見や感覚に耳を傾けるという機会が大事になってくるんですね。

大塚:前回掲載時のコメントを拝見して感じたのは、ここに参加してくださっている人たちがこのプラットフォームを通じて、さまざまなことに気が付いてくれているということでした。
 このプラットフォームは、まさしくバーチャルな国家戦略室になり掛けているということです。そうした議論の場が、これからもっとたくさん必要だと感じています。

大上:ところで今日、副大臣の部屋に通された時、スタッフの皆さんからとてもフレンドリーな雰囲気を感じました。

大塚:うちの職員ですか?

大上:はい。やっぱり建前ばかりではなく、足元で自由に物を言える空気になっていることが多くの意見をもらうことに繋がるんだと思いました。ワイガヤ会みたいな。ハードルはあると思うんですが、今、副大臣が担当されている地域活性化統合事務局などでも、誰でも参加して週に1回でも、夜に少しビールでも飲みながら、いろいろな地方の問題を取り上げてどんどん語り合っていくというようなことができればおもしろいかもしれませんね。

大塚:それはいいですね。そのぐらいの心の余裕や行動の余裕も欲しいです。お酒を飲みながらなんて不真面目だと思われるかもしれませんが、リラックスできるサロン的なものの中からクリエイティブな発想や意見が生まれてくる場合も少なくない。そういう、良く言えば余裕、ちょっと違う言い方をすれば付加価値を生み出すような工夫をした空間と時間は欲しいですね。

大上:そうですよね。「気軽に話が出来る」場をもっと作らないとだめだなあというのは、つくづく感じます。立場が上の人たちとでも新橋あたりで割り勘でコップ酒に近いようなものを飲み始めると、そこに何か生まれてきますから。そこに行かないとダメですね。

大塚:いまの若い人は「飲みニケーション」というのはあまり好まないんでしょうけれど、お酒を飲む、飲まないは別にして、本当にフランクに自分の考えていることを言い合って、お互いの考えがスパークするような機会は、工夫して設ける必要はありますよね。

大上:ええ、ぜひそういうのを考えてください。水を飲んで熱く語るでもいいし。役所も結構良いことをやっている例はたくさんあるし、地域のために力を尽くしている人達や例も大勢あります。そういう話をみんなでワイワイガヤガヤ共有して、全国に発信していけば、新しいことが生まれてくると思います。

大塚:おっしゃる通りだと思います。先ほど、お話した私が責任者として活動している地域活性化統合事務局というのは、そういった多くの意見をまとめて実現していくチームです。
 例えば地域で何かイベントを開催して活性化につなげたいという案が出た時に、道路に関しては警察、開催する広場の管轄は国交省など、さまざまな規制が各役所にちらばっているんですね。
 その過程で、各役所がそれこそできない理由ばっかり言って、結果的に実現に至らなかった案件というのがいっぱいあるわけです。だから、私が就任直後、地域活性化統合事務局のスタッフに伝えたことは、何かアイデアが出てきた時に、「役所からいろいろな制約があってできない」ということを地域の人達が相談にきたら、たらい回しにせず、ワンストップで相談に乗ってあげなさいということです。

NBO:活性化の目的に耳を傾け、実現のために一緒に考えそれを行動に移すんですね。

大塚:そうです。事務局には各役所からの出向者も地方からの出向者もいるわけですから、ここに頼めば何でも解決する、つまり「どうやったらできるかということを考えるのが、あなた方の仕事です」と。
 これまであった頭の構造を変えただけで、もうだいぶ動きが変わってきているんですよ。

大上:それはうれしいことですね。

大塚:だから『ダメな理由は聞きたくない』に批判的なコメントがあったのは、ちょっと意外でした。
NBO:真意が伝わっていなかったんですね。
大塚:そう思います。地域活性化統合事務局の話は典型例ですけれども、今までは各役所と地方が集まって新しいことをやろうとすると、それぞれのできない理由を持ち寄って「だからこの新しい取り組みはできないんだ」と結論づけ、多くのことが実行されないでいたわけです。
 そうじゃなくて、「どうやったらできるか」という知恵を集めると、1つのプロジェクトがブレークスルーしていくんです。同じようなアプローチで、さまざまな分野でこの国の成長戦略につなげていかなければならないなと思っています。
 ですから、読者の皆さんにも、さまざまな意見、「こうすればできる」というようなお話を聞かせていただければうれしいですね。
(続きは明日。金曜日「新しい政策形成プロセスを構築する時代になっている」です。)


0 件のコメント:

コメントを投稿