2011年11月7日月曜日

「売れない時代に売る」ための営業改革

5回:営業プロセス標準化は営業改革の中核



<営業プロセス標準化の目的・意義>

前回のコラムでは、顧客の立場での購買プロセスの最も初期の段階である、顧客の漠然とした曖昧なニーズや問題意識から課題を明確化し、ソリューション(=案件)を定義するまでのプロセスに対する営業活動を「案件創出型営業」と定義し、この活動が最も重要であることを提起した。
この段階においては、顧客自身が経営的な大きなレベルでの課題・問題意識を感じているものの、明確なソリューションレベルでのアイデアを持ちきれていない段階であり、このような段階であるからこそ、顧客の潜在的・根源的なニーズを掘り起こして自社商品・サービスを訴求することで、自社の土俵による営業活動を展開することを可能とする機会であるからである。
もちろん、それに引き続き実施される「案件マネジメント型営業」も、提案機会を獲得した案件を確実に受注に結びつけるため大切なプロセスである。

さて、みなさんの会社では営業プロセスは標準化されているだろうか。
「営業プロセスの標準化」と言ってもいろいろな定義があるし、また各企業ごとにその導入目的、範囲、内容等は異なっているが、概ね以下のようなものであると考える。

1.  顧客との初期コンタクト (場合によっては営業計画策定)からクロージングまでの営業活動を一定の業務単位に区切り、それぞれの業務において実施すべき活動内容、および実施主体(組織)を具体的に定義
2.  その活動において取得・明確化すべき情報や作成すべき成果物などの定型フォーマットの定義
3.  これら活動を効果的・効率的に実施するためのノウハウやアドバイス、事例など参考情報
4.  さらに、これらの営業活動を効果的に管理するための管理指標や管理ポイントの定義(営業マネジメントプロセス)

これらの営業プロセス標準化の目的・意義は、主として、成約に結びつく勝ちパターンを盛り込んだ標準的な営業活動を定義・浸透させることで、営業部門全体でのスキルレベルの底上げにある。また、営業管理をする上でも、営業活動とその管理ポイントが定型化されていることで、統合的・一元的な視点から営業活動の管理が可能となる。さらには、営業活動が標準化されていることで、営業活動の自動化の推進を容易にし(営業支援システム)、営業活動の効率化の達成も図りやすくなる。

これらのようなメリットを享受できる営業プロセスの標準化は、まさに営業改革の中核となるのである。












<営業プロセス標準化における要諦>

実際には、各社の業種・業態特性、商品・サービス特性などを含む営業特性によって変動するが、上図に標準的な営業プロセスを掲載した。
このような営業プロセスの標準化を図る際には、いくつかの大事なポイントがある。

1.徹底的な顧客理解
2回のコラムにおいて、真の顧客ニーズ(=根源的な顧客ニーズ)に訴求することの重要性を説いた。特に営業プロセスの前半においては、徹底的な顧客理解を志向し、顧客の視点で顧客の立場からの情報収集を徹底的に行う必要がある。真の顧客ニーズを無視して、自社商品・サービスの優位性を訴求しても、顧客には全く響かないからである。
特に「1. アプローチ」、「2. 顧客課題明確化」においては、自社サイドの思い込みを極力排除し、徹底的に顧客の生の声を聞くという「傾聴力」、および、表面的な言葉の奥に潜む根源的な問題意識やニーズを引き出す「質問力」が大事になってくる。

2.「機能」ではなく「効果」へのフォーカス
3. ソリューション定義」や「4. 提案」においては、顧客のニーズに敵かうに訴求できるソリューションを提案する。この時に重要なのは、「機能」ではなく「効果」を訴求することである。言い換えれば、「モノ」ではなく「コト」を売るのである。
やはり第2回のコラムでは「顧客はその商品・サービス自体が欲しいわけではない。本当に欲しいのは、商品・サービスを活用することによって得られる価値を求めているのである」と記載した。


例えば、「自動車」という「モノ」が欲しいのではなく、彼女と海辺を快適にドライブする「コト」を求めているのであるし、「食料品」という「モノ」を仕入れたいわけではなく、小売店にとっての売れ筋商品を提供することで売上を向上させる「コト」を求めているのである。
この視点に立脚して、ソリューションを構築・定義していく必要があるし、最終的な「提案」においては、自社の商品・サービスの機能ではなく、徹底的な顧客にとっての効果を訴求することが必要である。

3.競合他社との差別化
みなさんの会社の営業において、どの程度競合他社のことを研究しているだろうか。筆者のこれまでの経験では、意外に競合のことを知らないケースが多いように見受けられる。
競合他社が存在しない中で営業が展開されることはあり得ない。しかも、昨今の情報化の進展、技術の進展による新規参入の増加等々、競合環境は厳しくなってきている。よって、以下に競合他社に打ち勝つかは、大きな営業活動上のポイントとなってくる。
2. 顧客課題の明確化」がなされ、「3. ソリューション定義」を行う頃には、競合他社に関する十分な情報収集を行う必要がある。その上で、提提案書作成を企画する段階においては、十分かつ明確な差別化ポイントを識別し、これを訴求した「4. 提案書」へと結び付けていくことが必要である。
こうした競合他社の情報収集や、競合との差別化戦略を盛り込んだ提案書を作成するといったことを、標準化された営業プロセスにおいては必須の活動として盛り込むようにしたい。


紙面の都合上、これら主要なポイントの紹介に留めるが、このように自社にとっての「あるべき営業活動の姿」を定義し、これをビルトインした標準営業プロセスとして定義し、浸透・定着化させることの重要性・意義は理解いただけたと思う。是非ともみなさんの会社においても、自社の営業特性にマッチした効果的な標準営業プロセスの定義に着手してはいかがだろうか。


エム・アイ・コンサルティング株式会社
真保 浩

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