第3回:営業チャネルの最適化による生産性とコスト効率向上
エム・アイ・コンサルティング株式会社
真保 浩

営業改革の次のステップは、営業チャネルの最適化であると考える。営業チャネルの最適化は、「顧客セグメントと営業チャネルの最適化」と「営業プロセスと営業チャネルの最適化」の2つの視点が基本である。
まず「顧客セグメントと営業チャネルの最適化」について、みなさんの会社は次のような状況にないだろうか?
(1) そもそも明確な顧客セグメントという考え方がない
(2) 営業チャネルは全てが人的リソース(=高コスト化)
(3) 営業リソースの限界で、本来攻めるべき市場や顧客をカバーし切れていない
(4) 営業担当者はリレーションのある訪問しやすい顧客ばかりケアしている など
こうした状況の中で、顧客セグメントと営業チャネルの最適化とは、概念的には以下のようなイメージになる。
<顧客セグメントと営業チャネルの最適化>
<顧客セグメントと営業チャネルの最適化>
自社にとっての重要度で顧客をセグメント化した上で(この例では、取引実績・期間などのリレーションと、将来を含めた潜在的な売上規模で、重要度を区分)、重要度の高い顧客には営業担当者によって手厚いフォローをし(B2C[注]で言えば、ロイヤルデスク/コンシェルジュ、顧客担当制営業等々が相当)、逆に相対的に重要度の低い顧客は、Web、電話、DMなどの低コストチャネルでカバーをすることで、営業担当者リソースの有効活用と、低コストチャネルによる幅広い顧客のカバレッジを実現することが、その戦略的意図である。
また、営業担当者の割り当てにおいては、経験・スキルレベルによって、担当顧客の割り当てを考慮する必要がある。既出のイメージ図で行くと、例えば、右下の象限(潜在売上規模は大きいが、未だリレーション開拓中)が最も攻めるべきターゲットであり、第一線級の営業担当者を割り当てるとか、右上の象限の現時点で既にリレーションもあり取引規模も大きい顧客は、ベテランとこれから伸びる中堅若手を割り当て、ベテランのフォローの下で大口顧客との取引経験を積ませるといった戦略的な割り当ても、営業担当者の最適配置という観点では必要な対応となる。
もうひとつの視点は「営業プロセスと営業チャネルの最適化」である。これは、営業プロセスの各段階ごとに、その特性に応じた営業チャネルを割り当てるというものである。
<営業プロセスと営業チャネルの最適化>
<営業プロセスと営業チャネルの最適化>
一般的に、全てのターゲット顧客への全ての営業プロセスを営業担当者(人的リソース)でカバーすることはコスト的にも得策ではないし、そもそもそこまで潤沢な営業担当者を保持している企業は皆無に等しいであろう。「いや、我社は全ての顧客対応は営業担当者が実施している」という企業は、本来100あるターゲット顧客のうち、目の前に見えている70とか80の顧客に対応しているだけであり、残りの潜在的ターゲットたる20-30の顧客には手をつけられていないことが多い。(B2Cであれば、店舗に来てくれる顧客だけでなく、店の外を歩いている人を来店させることが営業対象)
いずれにしても、これが新規顧客開拓に悩む企業が多いひとつの要因である。

さらには、特に初期の情報収集段階におけるWebの活用度合いは非常に高まってきており、顧客利便性という観点も考慮すべき事項である。
初期段階の情報収集や競合との比較検討などによる一定の研究や絞込みは自らで実施したいという顧客や、いきなり営業担当者が出てくると面倒なので簡単にWebや電話で済ませたいといった顧客層は存在する。また、興味を持ったら24時間365日いつでも即座に情報収集したいというせっかちな顧客もいるであろう。こうした顧客からすると、営業担当者以外の顧客対応チャネルがあることは非常にありがたいし、逆に企業からしても、顧客の購買意欲が高まっているときこそ、最も確度の高い売り時であり、これを逃さないことは大事なことである。
さらには、これらの営業チャネル(顧客接点チャネル)を多様化させる際には、その対応品質と、チャネル間の情報連携が非常に大切である。
せっかくWebや電話で問い合わせてきた新規顧客情報が営業担当者に引き継がれない・放置されているというもったいない話は結構よくある。また、同じ内容を何度も説明することなく、Webで問い合わせした内容は確実にコールセンターに引き継がれ、即座に必要な情報をきちんと提供してくれるなどの一貫性のある対応は、顔を合わせないチャネルなだけに余計に大切であるし、それが初期段階における顧客への企業イメージとして確立・固定化されるからである。
今回は紙面の都合があるので基本的な考え方の記載に留めたが、営業チャネルの最適化には検討すべき論点が多い。何故なら、営業コストの多くは人件費を含む営業チャネルに係るコストであると同時に、チャネルは実際の営業活動を行う主体であり、すなわち企業の売上を担うものであるからこそ、その営業ROI(=投資対効果)が重要な経営課題になるからである。
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