2009年8月10日月曜日

Web マーケティングの効果を高める3つの原則 ~ Web 先進国アメリカから学ぶ ~Part Ⅱ

■目次
1.Web マーケティング戦略は本当に検討されたか?
2.顧客に見つけてもらい、選ばれるアプローチとは?
3.ROI を意識した「成果」につながる改善活動


1.Web マーケティング戦略は本当に検討されたか?
PartⅠで、商品や顧客の特性を踏まえたWeb マーケティング戦略が
あるべきと申し上げた。しつこいようだが、この出発点が大変重要で
あることを改めて強調しておきたい。

そもそものWeb マーケティングのあり方、位置づけの議論がなされて
いないと、全ての活動が土台から揺らいでしまうため、土台の検討なしで、
次の段階へは進まないようにご注意いただきたい。

さもないと、そもそもの目的である「売上の拡大」が実現できなくなって
しまう。

2.顧客に見つけてもらい、選ばれるアプローチとは?
さて、ターゲット顧客が明確となり、他社と比較した際の自社商品のウリが
明らかになったところで次に考えるべきは、どのようなアプローチでリードを
獲得すべきか?という点である。この議論を始める前に、ある企業A に
おける失敗例をご紹介したい。

-企業A の失敗
ターゲット顧客と自社の差別化ポイントを明確にした企業A は、「リード
(問い合わせ)数を月間200件獲得する」という目標を掲げ、早速
新しいWeb サイトの構築を始めた。

まずは、ランティングページといわれる、商品専用のホームページを
作成し、そこから問い合わせ獲得できるよう工夫した。この領域に詳しい
Web ベンダーに相談し、PV 数を向上できるよう、初期投資は必要という
判断をした。

しばらくすると、一定のPV 数が得られるようになり、担当者は
ほっとした。新しい試みであったので、やはり社内では注目も集めるし、
失敗は許されないとプレッシャーがかかっていたからだ。

しかし、どういうわけかPV 数は集まってくるものの、どうしても問い合わせ
につながらない。リード(問い合わせ)の獲得が目的なので、PV 数だけ
多くても仕方がない。担当者は頭を抱えた。どうすればいいのだろうか。

・リードの「量」が足りない
こういった試みを始めると、多くの場合、「リード数の絶対量が増えない」
という壁に直面する。我々も「とにかく問い合わせが増えないんです」という
お悩みをお聞きすることが多いのだ。

その要因は、そもそものターゲット顧客が不明確である(PartⅠで紹介
したWeb マーケティング戦略が不在である)から、というのも大きいのだが、
ターゲットが明確であってもこのような事態に陥る場合が少なくない。
それはなぜだろうか?

実は、リードを獲得する手法として、法人に限らず適応可能なWeb サイトの
デザイン・テクニック(顧客のアクション数をできる限り減らす、つい押したく
なるボタンのデザインを活用する、とにかく顧客情報を入力していただける
ようにする…など)が存在するが、これは多くのWeb ベンダーが既に提供
しているものであるため、本レポートではより本質的な部分に触れさせて
いただく。

・顧客の行動をどこまで理解しているか?
リードの「量」が増えない。その理由は、一言で申し上げるならば「顧客の
ことを深く理解していない」からである。商品やサービスを購入する際、
「顧客がとる行動はどういうものなのか?」その理解が不足しているのだ。

あるいは、理解していたとしても、それをWeb 施策へと反映させられていない
ことが大きな要因だ。では、顧客の購買行動を理解するためには、
どのようなことがわかればいいのか。実際に営業担当者などに聞いて、とも
に議論するのが最も近道だ。参考までに、議論すると有益なポイントを挙げ
ておく。

すべてこれまでに成功した「典型的な受注案件について」議論することが
重要である。

-コンタクトがあってから、どの程度の期間で受注できたか?
-どのようにして顧客は自社あるいは自社が提供する商品(サービス)を
知ったのか? 
-顧客が最初にほしがった情報はどういうものか?
-最終的に顧客が自社を選んだ理由はどこにあるのか?

いかがだろうか。これらについて、Web マーケティングを行う側がすらすらと
答えられるようであれば、必ずリード数は増えていくはずだ。我々の経験だと、
はじめに顧客がくるページ(ランティングページ)に「まず知りたい情報」以外の
内容をたくさん記述してしまっている場合が多いし、注文や見積もりを得る
ための「お問い合わせ」ボタンを配置してしまっていることが多い。

B2C の商材に限りなく近い商品(サービス)ならともかく、情報収集の段階で
注文や見積もりのための問い合わせをする人は限りなく少ない。また知り
たい情報以外の内容が記述してあると、顧客側からするとフラストレーションに
なってしまう。これは、セールス期間が長ければ長いほど、当てはまる傾向である。

・はじめにプロセスを設計する
顧客の行動を理解することが重要であると申し上げたが、実はこれは
優秀な営業マンであれば必ず考えていることだ。

彼らは、いつも最初にどのような人物にアクセスすべきか、どのような
情報をまずは提供するのか、次のアクションとしてどのようなことをやるのか、
クロージングのタイミングではどのようなことをするのが最も有効か、といった
内容を押さえており、自分なりに工夫しながら最も勝率の高いアプローチを
洗練させている。Web マーケティングで行うべきは、彼らと同じプロセスを、
人手を介さずにやるというだけのことなのだ。

従って、まず初めにやるべきことは、ランティングページを構築すること
ではなく、「どのようなプロセスで顧客にアプローチすると勝率が高い
のか?」という答えになり得るWeb マーケティング・プロセスを設計する
ことである。

我々はこのWeb マーケティング・プロセスをFunnel(ファネル)と呼んでいる。
Funnel とは、直訳すると「ジョウゴ」の意味で、Funnel を見込み顧客に通って
いただくことで、最終的な受注につなげることをイメージしている。

下記の図は、最もシンプルなFunnel の例だ。問い合わせを行った顧客に対して
メールでフォロー、その後電話でアプローチを行い、通常の営業プロセスに
引き継いでいくイメージとなる。
このようにあらかじめプロセスを設計しておくことが、次に解説させていただく
「ROIの向上」につながっていく。

3.ROI を意識した「成果」につながる改善活動
さて、プロセスが設計でき、その通りに見込み顧客が増えていったとしても、
ずっとその方法で成功するとは限らない。はじめに設計したプロセスが万全、
ということはまずあり得ないし、競合の動きや環境の変化によって影響を
受ける可能性も高い。

・施策が後手に回る不幸なケース
せっかくWeb マーケティングに投資をしても、あまり効果が出ないために
余計なプレッシャーを受け、焦ってリード獲得のために不必要な投資を
行ってしまうケースも少なくない。

新しい取り組みであればあるほど、社内における注目も高いため、効果が
でなければ ネガティブな意味でマネジメントの関心事となってしまう。実際に、
方々から「ああしろ、こうしろ」との指示が多くなり、Web マーケティングの
チームメンバーの士気が下がり、施策そのものに前向きなアイディアや活動が
なくなってしまって身動きが取れなくなったケースも存在する。

そのようにならないためには、前述のような明確なWeb マーケティング・
プロセスを設計しておくことはもちろん、徹底したPDCA サイクルによって
管理することが大変重要である。
・Web マーケティングの世界こそ「改善アプローチ」
改善アプローチというと製造業のイメージが強いかもしれないが、
プロセスを設計し、それをメンテナンスしつづける考え方は、まさに
改善アプローチだ。何をどのように変えると効果があがるのか、
様々なアクションが最終的な受注に結び付いているため、ちょっとした
アクションが大きく数字を左右することがある。

あるSNS を運営するシリコンバレーの企業は、顧客の動向を5分間に
一度モニターしているというが、そこまで大袈裟にとらえなくてもそれぞれの
プロセスのコンバージョンを押さえておくだけでも意味がある。
具体的に説明しよう。

プロセス①(例:ランティングページを訪問)から、次のプロセス②(問い合わせ
ボタンをクリック)へと進んだ見込み顧客は何%か?そのコンバージョンは、
先月と比べてどうなのか?こういった細切れ管理を一つ一つ丁寧に実施して
いくことが求められる。

例えば、「とにかくPV 数は多いのに、問い合わせ数が足りないのです」
と言われた場合、我々も短期的に行える施策があったとしても、最終的には
顧客のアクションごとに、どこが具体的に課題なのかがわからないと、手の
打ちようもないのだ。

これは、実は段階が進んでいけばいくほどさらに深刻化する。たとえば、
問い合わせ数が増えていっても、具体的な商談につながらない、リードその
ものの質が良くない(いわゆる、ターゲット顧客以外の受注につながらない
ものが多くなってしまう)という問題も発生してくる。これらに対処できるように
するためにも、具体的な課題へとドリルダウンできるための管理が必要なのだ。

・効果が期待できれば投資もできる
具体的な改善施策が想定できれば、やみくもな投資をしなくて済む。また、
本当は必要な投資に対しても、単に「効果がでていない」という理由で却下
されることも少なくなる。

Web マーケティングの担当者は実際に営業をして数字を稼ぐわけでは
ないが、客観的な数字に裏打ちされた分析結果を持つことができる。

我々は、具体的なプロセス管理は、これを可能にすると思う。これまで
法人マーケティングの世界では、あまり行われてこなかった営業活動その
もののエンジニアリングを、Webマーケティングを駆使して実施してみては
どうだろうか?

このような活動が、米国のみならず日本でも浸透していくことを願って
やまない。


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